地球環境を支える計装
I 計装と計装工事業の概念
「計装」と云う言葉は、「INSTRUMENTATION」の訳である。「広辞苑」では、「制御の目的で、計測装置又は計測制御装置を装備すること、またその技術」、「大辞林」では、「生産工場において、工程を計測・制御する装置を設置・運用すること、又は計測器システムの諸機器の設置などの工事」と定義付けられいる。
一方、日本工業規格(JIS) Z8103-2000では、「測定装置、制御装置などを装備すること」とされ、その解説では『対象とするシステムの運転及び管理を具現するために対象システムの計測、制御、管理方法などの方法をを検討して、制御及び監視のための装置を装備すること。』と、計装を説明している。
実務面で表現すると、計装とは、「工場(鉄鋼、化学、石油、電気など)、施設(物流、交通、通信など)、ビルディング(事務所、病院、学校、ホテルなど)において、設備が高度な機能を発揮し且つ、運転・管理の省力化、省エネルギー化、効率化及び品質・安全の確保を実現させるため、適切な計測機器、制御機器、監視制御装置を計画し、装備し、運転管理する一連のシステムを云う」となる。
このシステムは、物やエネルギーを作る施設、商業活動をする施設、交通、通信、流通などの社会施設などを、信号(情報)によって制御・管理するものである。その計測、制御情報の伝送には、電気配線、空気配管、光ファイバー、電波などが使われる。また工事は配線工事、配管工事、通信工事、機器設置工事などの複合技術によって成り立っている。
1 計装の目的である制御の考え方(手動制御と自動制御)
わかりやすい例として、風呂を沸かすケースで手動制御と自動制御を図表2を参照して説明しよう。
風呂を沸かす時、まず浴槽の排水弁①を締め(手)、水道のコック②を開く(手)。次いでガス栓③を開け(手)点火する。湯が入浴に適したことを手④で確認(皮膚)し、ガスの元栓を閉める(手)。⑤湯を汲み出して少なくなった時目)には、水道のコック②を開けて(手)水を入れ、湯温④が低くなる(皮膚)と、またガス③に点火し(手)適温まで上げる。これが手動制御である。
では、この行動を自動制御に置き換えてやると、どうなるか。
図表2 風呂を沸かす時の手動制御と自動制御
排水栓を電磁弁⑥とし、押しボタンを押すことで弁は閉まる。この後水道コックの電磁弁⑦が開いて水が出てくる。浴槽に、⑧水深が70cmになるよう、あらかじめセットしておけば、70cmになった時に水道コックの電磁弁⑦が閉まり、ガスの元栓の電磁弁⑨が開いて点火される。湯温⑩が40度になった時にガスの電磁弁⑨が閉じるようセットしておけば、湯温⑩が40度に達すれば、自動でガスは消える。汲み出しによって水深⑧が70cmより低くなれば、水道の電磁弁⑦が開き、所定の水深まで水を入れる。それによって湯温⑩が下がれば、ガスの電磁弁⑨が開き点火され、40度になればガスは消火される。つまり、計装と云うのはこうした一連の確認・判断、動作をすべて自動制御に置き換えて作業させようと云うものである。
2 計装工事の内容と工事管理の概要
計装工事は、単に計測器を装備するだけではななく、測定量としての情報の検出、その測定量及びその情報に対する操作量の伝送、処理、操作、人間に対する指示、記録と云った情報を伝達し、その結果、人間からの情報の流れを取り扱う一連の設備に関与する。
その現場工事は、各種計器類の据付けや配線・配管工事など、図表3に大別される各種の複合工事から成り立っている。
① 計器盤及びコンピューターの据付け | ⑥ 計装配管工事(信号及び供給空気・油圧配管工事、導圧配管工事) |
② 計器盤内の配管・配線工事 | ⑦ トレース工事、保温工事 |
③ ダクト、ラックの据付け及びトラフの敷設 | ⑧ 塗装工事 |
④ 計器類の取付 | |
⑤ 計装配線工事(信号及び制御配線工事、温度計配線工事、電源配線工事、防爆配線工事、接地工事) |
図表3 計装工事に関わる主な工事
電気及び光信号配線、空気配管工事は、計測器で変量を検出し、その信号を制御装置へ送り、判断、記録して操作信号を出すための伝送路を作るものである。
電源配線工事、供給空気配管工事はコントロールバルブ、遮断弁等の操作機器を作動させたり伝送器、変換器等の計測器の動力源となるためのものである。
導圧配管工事、分析計サンプリング配管工事は、圧力、流量、液位、成分などの分析及び測定のために、それらの流体を、直接計測器まで導くためのものである。
トレース工事や保温工事は、それらの流体のうち、常温では凝固したり、晶出したりする物質や、液体のままでは正確な測定できない物質、凍結の恐れのある物質等の場合に、導圧配管や分析計サンプリング配管を蒸気や電熱で加熱・保温するものである。
何れにせよ、計装工事と云うのは、機器取付工事、配管工事、配線工事、保温工事などを複合して、調和のとれた制御システム・設備を構築するものだと云うことができる。
「計装」を具現化するには工事管理が必要であり、計装工事業の業務内容は、設計・施工、調整、メンテナンスの広範囲にわたるもので、下記により概ね構成される。
① 計装に関わる事前コンサルティング及び基本設計
② 計測、制御機器の選定、監視制御システムの設計
③ 施工の詳細設計
④ 必要な機材の調達と検査
⑤ 機器の据付け及び配線、配管などの工事及び試験
⑥ ソフトウエアの立ち上げ
⑦ 試運転調整
⑧ メンテナンス
II 計装の分野別概念
計装工事の代表的な分野は、「プロセスの計装」、「ファクトリーの計装」及び「ビルディングの計装」に大きく分けられる。
1 プロセスの計装
現代の産業において、物質とかエネルギーの形態、或いはエネルギー自体を変えることを目的とするガスや電力事業をはじめ、石油精製・石油化学工業、製紙、製鉄、フィルム工業、セメント工業など、所謂プロセス工業とよばれている産業分野(以下その装置自体をプラントとも表現する)の発展は目覚しいものがある。その発展に中心的役割を果たしたのが計装技術であり、製品の質、歩留り、工程、経済性、安全性を著しく改善してきた。この生産処理過程を自動化するものがプロセス・オートメーション(PA)である。
計装技術は、さまざまな形態の生産工程を管理するものであり、温度、圧力、流量、液位、組成、品質、効率などの諸量を管理し制御するもので、これからその例を示すようにファクトリー・オートメーション(FA)、ビルディング・オートメーション(BA)とも異なるものではない。
図表4 計装設備と他の設備との関係(概念図)
しかし、プラントにおける計装はプロセスの運転そのものを支配するものであり、生産を目的としたプロセスそのものを管理している点に特徴がある。つまり、FA・BAが人の介入又は人の居住性と不可分であるのに対し、プロセス・オートメーションは寧ろ、これを排除し生産性の向上のみを目指すところに特色がある。
また、計装で使用されている機器の多くはプロセス計装で開発され、これが、FA・BA技術の急速な進歩に寄与してきたことも否めない。
運転制御システムを構築する
プロセス計装で重要なことは、ガス、液体などの流体の運転中の圧力、温度、成分及び液位などのプロセスの特性を理解し、その特性に合った情報の検出方法、伝送器などの検出器制御装置、操作機器、材料を選定すると共に、これらの機器類が効果的に機能するように運転制御システムを構築することである。
一方、プラントの運転中にアクシデントが発生した場合、そのアクシデントの発生個所、内容、程度を把握し、その重要性に応じて、燃料の遮断、ポンプ類の停止とラインの切り離しなどするが、装置が大型化すればアクシデントの発生による人的、環境的、経済的影響が大きくなるのは当然で、これらの問題がクリアーされつつ更に、装置は大型化・効率化されていくことになる。
プロセスとは先にも述べたように、それぞれ生産目的をもったものであり、そのプロセス毎に装置のイメージはかなり異なる。以下に、計装を全面的に導入している業種と、その代表的プラントを列挙してみる。
① | 電力、原子力プラント | 発電装置、熱回収設備などの制御 |
② | 石油、石油化学、ガス、肥料プラント | 蒸留精製、合成分解反応塔、改質装置などの制御 |
③ | 金属、冶金プラント | 熱処理、表面処理、硬化、硬度調節などの工程制御 |
④ | セメント、ガラス、鉱業プラント | 粉砕、混合、熱変成などの工程制御 |
⑤ | 製紙、パルプ、薬品、食品プラント | 粉砕、化学処理、混合、脱水、熟成などの工程制御 |
⑥ | 繊維、紡績プラント | 溶融、押出し、巻とり、染色などの工程制御 |
⑦ | 環境衛生プラント | 下水処理、ゴミ焼却などの熱、粉塵、排水、排煙などの工程制御、天候、水位などの観測、報知 |
これらに共通したブロック図を描くと、概念的にはむしろわかりにくいかもしれないが、図表5のようになる。この基本的な概念をいかに現実の生産工程に効率よく導入していくかが、計装技術と云うこともできよう。
図表5 プロセス計装(例)(ブロック図)
生産プロセスの制御・監視を司る
プロセス計装と呼ぶ場合のプロセスとは、一般に石油、石油化学、製紙、原子力発電などの産業装置を指し、その特徴は原料から製品に至るまで、工程のすべてが流動体を扱い、基本的に連続していることである。
そのほとんどは気体、液体などの精製、改質、混合などを行い、固体の切削、組立てなどは行わない。工程中の測定は温度、流量、圧力及び液位の4大測定量がほとんどで、品質、成分などの測定、安全、防災上の測定が少数ある。他に操作端である調節弁や安全弁等があり、それらを集中制御又は監視するためのコンピューターがある。(図表6参照)(印刷はB4横を進めます)
① | 温度計測 | 殆どが熱電対、測温抵抗体で占められ、あと熱膨張式、光・色によるものなどがある。 |
② | 圧力計測 | ブルドン管、ベローズなどの機械的変位を読取る形式が多く、他に半導体の電気抵抗や、静電容量インダクタンスの変化などの電気特性を読み取るものがある。 |
③ | 液面計測 | ディスプレースメント型が多く、次いで圧力を2点で測定し、その差を検出するものが多い。他に浮子式、超音波や静電容量を利用したものがある。 |
④ | 流量計測 | 圧力を2点で測定し、その差を検出するものが主体で、他に面積、電磁、超音波、渦、容積及びタービン式などとよばれる形式がある。 |
⑤ | 性状分析 | 硫黄濃度、炭化水素濃度、粘度、透明度、色などを測定している。 他に安全上の必要性から漏油検知、ガス検知、消炎検知などもしている。 |
⑥ | 調節弁 | 空気圧により弁の開閉を行うのが殆どで、他に液圧によるもの、電磁気によるものなどがある。 |
⑦ | 伝送信号 | 電気及び光信号線があり、操作端である調節弁の近くで空気又は油圧に変換しているものがある。 |
2 ファクトリーの計装
組立加工工場生産システムの自動化は、1980年代後半からCIM(コンピューター・インテグレイティッド・マニュファクチャリング、コンピューターによる統合生産)なる新しい段階を迎えた。これは、通信ネットワークを用いて、自動化された生産システムをコンピューターと結び、生産の計画→実施→統制の統合化を達成させ、更には生産から販売までの一元化をめざすものである。
FAの定義は明確ではないが、ここでは、受注から計画、製造、検査及び出荷までを情報処理とメカトロニクスの技術を駆使し、フレキシブル生産( FMS=フレキシブル・マニュファクチャリング・システム)を指向した組立て加工工場の工場一貫自動化システムを図表7を例に挙げて説明する。
図表7 FAのイメージ図
従来、ストレージ(保管)、搬送、投入、計量、加工及び梱包と云った「物の流れ」を中心とした生産設備の自動化に加え、FAでは「情報の流れ」について積極的に取り組んでいる。情報を一元化することによって、トータル管理システムの構築をめざすものである。これを達成するためには、工場の管理体制により異なるが、図表8に示すような組立て加工の自動化レベル、工程管理レベル、生産管理レベル及び事務レベルなどに分類したとすれば、それぞれのレベルで役割を決め、価値を生むための優れた管理機能が必要になる。
物の流れを、「横方向の展開」とすれば、情報の流れは「縦方向の展開」と云うことになり、縦、横の関係を上手に組み立てるのが、FAシステム構築のポイントである。横方向の「物の流れ」は従来から自動化が進められてきたが、近年のマイクロエレクトロニクス、メカトロニクスに代表される優れた産業ロボットや無人搬送車の登場や、更にはコンピューターや情報ネットワークなどの技術の応用によって、「情報の流れ」を取り入れた新しい自動化システムの実現が可能となってきた。
サブシステムを有機的に結合する
FAシステムを構築する要素技術は、ソフトウエア技術、コンピューター技術、メカトロ技術、情報通信技術及びセンサー技術などがある。すなわち、これらの技術を駆使し、「情報の流れ」を上手に組み立てて、全体を構成する各々のサブシステムを有機的に結合し、FAシステムを構築するのが計装の果たす役割である。
(図表9参照)(印刷はB4横を進めます)
3 ビルディングの計装
ビルディングにおける計装の目的は、その設備に適切な計測器(センサー)、制御装置を効果的に配置し、それらを最適に制御することにより、建物の省エネルギー・快適・安全・利便性を提供し、人間の知的生産活動に寄与することである。
ビルディングの計装設備は図表10に示すとおり、各設備単位での計測、制御はもとより、これら各設備間を有機的に統合し、制御、管理する役割を果たしている。
ビルディングの建築設備は近年、次第に大規模・複雑化し、自動化が進むとともに使用されるセンサーや制御機器も高度化・多様化している。これらの設備全体の状況を把握するために、これらの情報を別々に扱うのではなく、情報を統合的に加工し、処理することが必要となる。これらを実現したものが、ビルディング管理・制御システムであり、計装の技術が最も発揮されているところである。
近年、ビルディング管理システムは、中央監視制御(センター)装置、ネットワーク、オペレーション、データの活用などについて、それぞれ柔軟性に富んだオープンなシステムが要求され、幅広い選択肢の中から建物の用途や運用に合った最良のシステムを容易に構築できることが望まれている。
逆に云えば、このビルディング管理システムが、建物の中でどの様な機能を持っているかが、建物の付加価値としての機能性に大きく影響することになってくる。
現在、インターネットなどの最新のマルチメディア技術やPHS/携帯電話を取り込んだ管理システムも実現しており、今後、建物の管理者や居住者がイントラネットを利用し、机上のパソコンで上記の制御を可能とするオープンな管理システムが主流となってくると思われる。
従って、ビルディング計装に携わる者には、多様な設備を統合管理するシステムを構築していくトータルコーディネーターとしての幅広く高い技術力が要求されてくることになる。
図表11にオフィスビルディングの計装概略系統図例を、図表12(印刷は図表11、12共B4横を進めます)にビルディングの計装例を示す。
III 近代産業を支える計装工事業
日本の計装技術と云われるものは、第二次世界戦争以降、我が国の産業分野に導入されたことから始まった。導入の中心となったのは、石油精製、鉄鋼、化学、電力など、いわゆる装置産業と呼ばれる近代工業であった。
当初、計測器や自動制御機器も諸外国からの輸入が多かったが、需要の増大に伴って国内製品の機器性能の向上、生産性の向上が促進され、現在では世界に誇る技術を持つまでに至っている。
装置産業であるプロセスでは、初期には、人間の手や経験によって運転操作が行われていたが、計測器、制御装置に組み込まれいる半導体や電子回路などの技術の進歩に伴い、高度な操業が可能となってきた。
最近では、時代のニーズにより、品質確保、省力化、省エネルギー化だけでなく、運転員の安全確保、環境問題への対応と云ったことから、生産工程自体が大規模・複雑化するため、人間の感覚や経験によって操業することが困難となってきた。
その結果、高機能の計測器、各工程毎に置かれたマイクロプロセッサによるファジー制御等の高精度の制御技術や通信技術により、中央制御室にCRTディスプレイなどを組み込んだ制御盤を設置し、システム化され、中央で制御、監視及び操作する方向へと計装技術は発展を続けている。
計装技術は、1950年代以降、石油、鉄鋼、化学などのプロセス工業を中心として経済復興と相まって大きく発展した。
当初の自動制御は、空気を駆動源とする空気式のもので、主にアメリカなどからの輸入に頼っていたが、1960年代以降には国内製品の性能が向上するにつれ、徐々に電子式に変わり、データロガーを手始めにコンピューターを活用するようになった。
プラントが大規模で複雑化した現在のシステムでは、ファクトリー・オートメーション化に見られるように年々プラントの統合制御管理の方向に進んでいる。
同様に、組立加工工場でも、1920年頃米国フォードの自動車工場で始められた流れ作業は、その後の50年間であらゆる産業に導入され、センサー技術、制御技術、通信技術等と組み合わされ、高度なファクトリー・オートメーション化を果たしてきた。更に、トランスファーマシンに代表される大量生産方式から、フレキシブル生産方式に代表される多品種少量生産方式へと、技術的に発展してきた。
1980年代後半からは、消費者ニーズをいち早く捉え、それらの情報を分析し、生産計画から販売までの一元化ファクトリー・オートメーションを目指すものへと発展している。
一方、ビルディング設備に計装の概念が取り入れられたのは、前述のように1950年代以降のことである。基礎となったのは、空調設備の自動制御である。その後、マイクロコンピューター技術の発展によってデジタル化が進展、設備の高度化、人間の快適な生活環境に対するニーズの高まりと、コンピューターの多様な制御プログラムの利用可能性が相乗効果となって、センサーや制御機器が多く設置され、ビルディング・オートメーションへと計装の適用が拡大されている。
特に、近年の高度情報化社会が進むにつれ、従来の設備単位内での計測・制御だけでなく、通信ネットワークとの結合により、各設備の統括管理を可能とし、更には、複数の建物を管理する群管理へと向かっている。
プロセス・オートメーションとしてスタートを切った計装は、現在ファクトリー・オートメーション、ビルディング・オートメーションへと、その適用範囲を広げている。
中でも、ビルディング・オートメーションは、これまで電気、空調、衛生、防災など、別々に管理されていたシステムがコンピューター技術を利用することによって、すべてデジタル化され、統合管理へ進んだ。その管理データはファシリティ・マネージメントに使われるようになった。
計装が、このように建築物に適用されるようになった背景には、建築物が効果的に利用されるために、そこに収容される設備が多様化し、プロセス工業に近い装置の性格を帯びてきているためだと云えよう。たとえば、その設備は、集中制御空気調和、集中制御エレベータ、オフィス・オートメーション、機器の集中管理、通信の集中管理、中水道の排水処理再利用、コージェネレーション、非常電源、自動駐車場、自動倉庫、ゴミの前処理、防火・消火、出入管理、自動警備、照明制御、テナント管理などである。即ち、ゴミ焼却、排水処理設備等プロセスの範疇で、その計装を扱ってきた対象がビルディングと一体となって設備化されることにより、それらを一括集中管理する機能を提供する広義のビルディング計装として云われる所以でもある。
1 複数の業種に関わる
建築物に設けられる各設備の制御・管理は、一つの設備システムの中だけで行われる部分と、中央監視制御装置で総合的に制御・管理される部分がある。そのため、設計・施工は、
① 各パッケージ内のシステムの設計・施工
② 共通部分の設計・施工
と全体の取りまとめ業務の2本立てで行われることになる。
前者は、パッケージの計装技術者、後者は共通担当計装技術者によって行われる。建築物全体の制御・管理システムは、①と②の業務が行われて、はじめて有機的に機能することになる。
逆に、計装工事業と云うものが存在しないと、制御・管理システムの工事は、各種の工事業が分担して施工することになってしまう。
一例として、スチームや水の流量制御について見てみよう。
まず、流量センサーの取付けは管工事、信号配線は電気工事か通信工事、集中制御盤の設置は機械器具設置工事、制御用調節弁の取付けとその駆動用空気配管は管工事と、各業種が分担することになる。その結果、一つの統一された機能を果たす流量調節装置の工事だけでも3つの業種が携わることになる。従って、各業種間の綿密な連絡調整が必要となり、そのための手続きも煩雑となる。
このことは、設計や工程の調整を困難化させるだけではない。制御系だけのテスト、設備を含めた総合テスト毎に工事担当者全部が立ち会わねばならない。また、総合のテストの結果、精度の不足や応答遅れなどの問題が生じた場合には、総合責任者の不在から責任の擦り合い、問題個所の発見に手間取ると云った不具合が生じよう。施工レベルの不統一による一部の劣化から、全体の性能を損なうケースも懸念されるなど、課題が生じることも予想される。つまり、制御・管理システムの工事を計装工事として一括して行うことで、この課題は克服できると考えられる。
2 産業発展にも大きな役割
計装工事は、建築物の設備を統合的に制御・管理するために不可欠なものである。それだけに特殊な技術と知識がもとめられる。このことは、計装技術が各種の計器を組み合わせると云う性格から起因する。
その各種計器にはメーカーごと、機種毎に数十頁に及ぶ取扱説明書がある。工事に携わる技術者、技能者は、計器メーカーの習得を受けるか、或いは社内研修によって、それらの取扱いを習得している。
計器を取付けた配管の耐圧テスト圧力と、計器の耐圧とは大幅に異なる場合があるように、計器の取扱いを理解していないと、工事設計ができなかったり、工事に当たって計器を破損したり、使用に当たって測定誤差が生じたりするケースがある。
また、計測器信号の信号配線は多種にわたり、センサー機種毎に、種類、施設方法、他の線との離隔距離、より方、保護方法、接続の方法などが異なる。
温度測定用熱電対は20種類あり、電線の材質は違う。その選定や施工方法を誤ると、測定誤差やノイズによってコンピューター停止などの障害が起こる他、保守点検ができないような事態が生じることがある。
配管工事における信号空気用銅管の処理についても、一般の配管とは異なる。
切断方法、曲げ方法、コネクター取付け方法など、特殊な技能が必要となる。
この他、計装機器への配管は、制御・管理する対象設備など建物内部のあらゆる設備の配管と深い関係があり、設計段階でこれらの配置をすべて確定できないため、現地での工事段階で配置の変更が起きる。
計器とその施工方法の知識がないと、信号線の長さ制限、計器の取付け姿勢の制約などを無視して間違った工事をする可能性もある。
計器、信号伝送などの知識がないと、総合テストでの精度不足、応答遅れ、ノイズ混入などのトラブルに際して、問題個所の発見ができないと云う問題も発生する。
インテリジェントビルディングだけでなく、電力や原子力、石油、化学、繊維、クリーンルームなど、産業界の発展にとっても計装技術は大きな役割を果たしてきた。
産業界の発展は、それと平行して環境公害やエネルギーの大量消費と云ったような“歪み”も生み出した。この問題を解決する上で欠くことの出来ないのが情報の流れであり、計装技術はこれらの解決のために重要な役割を担っている。
3 最適システム構築には専門家の手で
今後も計装は、その重要性を増すことに異論はないであろう。産業界の更なる発展の原動力となり、中核神経となるだけでなく、室内環境、地球環境の快適さを保つためにも必要欠くべからざる分野となる。
計装技術は特殊な技術・知識と経験を必要とする。このため、電気工事、管工事などの技術者が計装工事を施工しようとすれば、新たな設備技術を習得・維持することが求められる。これは、きわめて難しいことであり、計装士のような専門家が担当するのが妥当であり、最もよいシステムを構築出来ることになる。
IV 高まる計装技術者の役割
人間の快適環境に対するニーズの高まり以外に、高度情報化の進展、生産ラインの省エネルギー化、省力化、安全性の確保と高品質な製品供給体制の確立・維持及びビルディング・オートメーションなどの側面からも、計装技術は社会にとって大きな役割を果たしていることは理解できよう。
そのため、特にビルディング・オートメーションに代表されるように、計装工事を空調衛生、防犯・防災と云った各設備システムユニット毎に計画、設計、施工する計装技術者や、それをトータルに見て全体としてのコーディネーターの役割を果たす計装士の資格を有する計装技術者の重要性が、改めて問われるようになる。
それだけに、企業にとっては何人の計装工事に関するスペシャリスト、つまり計装士を抱えているかが、これからの発展のカギを握っていると云っても過言ではない。
将来、設備工事業界も含めた建設業界は、ただ単に施工力のみを持つ企業と、独自のエンジニアリング力を持つ企業に二極分化されていくだろうと予測されている。その中にあって、設備業者が単なる“施工”に止まらず、設備エンジニアリング企業として生き残っていくためには、計装技術者が不可欠な存在であると云うことができる。
1 増える計装士資格取得者
日本計装工業会が、労働大臣認可の形で、「計装技能審査制度」に基づく第 1回試験を行ったのは、1977年7月に学科、9月に実技試験が行われたことである。その時は、1級受験者429人、合格者121人、2級受験者676人、合格者183人で、合格率はそれぞれ28.2%と27.1%であった。
合格者の年度別推移は末尾別表のとおりだが、中でも、1991年から合格者が、際立って多くなってきた点が注目される。これは、ビルディング・オートメーションへの計装技術の重要性を感じ始めた各社が、受験するものに、熱心な教育をした結果であると見ることができる。勿論、本人たちの努力があったことは云うまでもないことだが、その努力を引き出すだけの、“何か”が各社の中であったであろうことは十分に推測できる。
2 SEを育成する計装士技術審査
計装技能審査は、1984年に建設大臣認定に変わり、その名称も「計装士技術審査」に変更された。現場施工において、設計図書どおりにモノを作る「技能士」でなく、システムを構築するシステムエンジニア(SE)としての「技術者」への脱皮を図ろうと云うのが狙いだ。
そして1992年、日本計装工業会は計装士技術審査の内容を改めた。受験資格の拡大・緩和と試験の一部免除、選択制の導入が柱である。
このうち、受験資格の拡大では、計測工学、制御工学、電気工学及び機械工学などの23学科の指定学科以外に、新たに大学、短大及び高等専門学校卒業で一定の実務経験を持つ者に門戸を広げた他、1級では電気又は管工事の1級施工管理技士、電気主任技術者、空気調和・衛生工学会設備士、建築設備士、2級では電気又は管工事の2級施工管理技士、第1種電気工事士にも受験資格を与えた。
これにより、これまで対象者がおらず、計装士技術審査を受けさせたくてもできなかった企業でも、計装士を生み出せるチャンスができたのである。
また、試験の内容も変更された。学科試験は、計装に関する科目Aと、施工管理、安全衛生、法規などの科目Bに分け、施工管理技士には科目Bを免除すると同時に、実地試験では共通科目以外はプロセス計装とビルディング計装が選択できるようにもした。一定レベルの計装技術者を数多く送り出すことによって、急増する計装工事件数に対応、ユーザーに不便をかけないようにとの考えが、ここにはある。
受験資格等は「計装士技術審査」をご覧ください。
V 活力ある計装工事業を支える日本計装工業会
1 日本計装工業会の誕生と発展
日本の産業技術、計装工事、計装技術の発展と歩調を合わせるかのように、計装工事業界内に同業者が集まろうと云う機運が生まれてきた。そして、1974年3月に誕生したのが日本計装工業会である。スタート時、会員企業は8社、無論任意団体であった。それから、ちょうど2年後、計装工事マニュアルの初版発行、同年9月には日本計装工業会の「日本計装工業会技能審査」が労働大臣の認可を受け、翌年第1回の技能審査が実施された。
工業会あんないの「沿革」をご覧ください
1980年12月、会員は79社に達し、建設省から社団法人の認可を受け、翌年5月、社団法人として第1回通常総会の際の会員は103社に達した。
1984年4月、計装技能審査は、労働大臣認定から民間技術検定認定第1号の建設大臣認定に移り、名称も「計装士技術審査」と改まった。
1986年12月、計装工事業のビジョン「活力ある計装工事業を目指して」を策定、1988年1月、このビジョンに基づいて設けられたワーキンググループが調査研究の報告をまとめ、この報告を受けて、3月にはインテリジェント・ビル勉強会、1989年12月にはファクトリー・オートメーション勉強会更に、1991年5月には人材育成検討委員会が発足している。1992年7月には、ビルディング・オートメーション勉強会を発足し、若手技術者の育成を行ってきた。
更に、日本計装工業会は活動を強化させるために、1992年4月に、会の運営組織を切り換え、政策、経営、広報、技術、研修、検定、機関紙編集、組織拡大及び中央審査の9つの委員会を置くことになった。
1999年第19回通常総会開催時点で、会員会社は約210社になっている。
その後の推移は、「正会員及び賛助会員」をご覧ください。
計装工事業の市場規模は、対象分野のプロセス、工場設備とビルディング設備における施工・計装機器・メンテナンスを包含すると、全体では年額1兆円を超すものと推測される。
今後、市場の大きな伸びが期待される計装工事、それだけに、計装分野に携わるスペシャリストを育成することは、大きな伸びと云う波に乗り遅れないと云うことでもある。
スペシャリスト育成のため、日本計装工業会は1991年5月から発足させた「人材育成検討委員会」で人材育成指針を策定した。
2 人材育成指針の提唱(1993年4月)
日本計装工業会がまとめたのは、「計装工事業界における人材育成指針」である。指針自体は、1992年1月、建設省が作成した「建設業人材育成基本指針」を参考にしているが、建設省のそれが「建設生産現場従業者」を対象としているのに対し、日本計装工業会では「現場従業者」だけでなく、「計装技術者」までも含んでいるのが特色だ。
指針は、「第1章 趣旨」、「第2章人材育成体制の整備」、「第3章 人材育成のガイドライン(計装技術者、計装技能者別)」から構成されている。
このうち、第2章では、技術者、技能者の修業年数によって、果たすべき役割とそれに必要な能力、更に能力を評価するための資格制度を明確にすることを求めている。更に、有資格者に対する優遇方策や活用方策を示している。
その実現のために、日本計装工業会が果たすべき役割として、①資格制度を拡充し、社会的地位向上のための積極的取り組み ②技能者に求められる役割と能力を明確にし、適正に評価できる制度の確立 ③技術者、技能者に対する資格取得講習、技術セミナーなど支援事業の実施 ④計装工事の先端性、重要性を社会にアピール ⑤技術者・技能者の社会的貢献に対する表彰制度の確立 ⑥女性の雇用促進、高齢者の活用……を揚げている。
一方、企業に対しては、①職階とその段階に応じた能力・資格の明確化 ②職階・資格に応じた能力主義、優遇措置の推進 ③積極的な人材育成の推進と資格取得の将来・援助……をするよう提言している。
人材育成のガイドラインでは、計装工事を「知識集約型産業であり、人材が最大の経営資源である」と前置きした後で、職位・職階とその役割の明確化、人事・昇進システムの確立、人材育成カリキュラムの作成、能力向上に対する評価・処遇の確立を図る必要を訴えている。
3 計装工事業の将来ビジョン-1の提唱(1986年12月)
さて、日本計装工業会では、その時代の変遷に従って、2回のビジョンをまとめている。
第1回目のビジョンは、どのようなことが述べられたであろうか。
ビジョンは大きく4つの章に分けられる。第1章は「産業構造の変化」、第2章は「計装工事業の役割」、第3章は「企業活性化への対応」、第4章は「課題」と云う構成である。
この中で、まず、産業構造の変化では、コンピュ-タと通信網の結合によって、我が国の経済構造、設備投資構造、産業構造が大きく転換していることを指摘した。この時代の流れの中にあって、計装技術の役割が重要不可欠なものになってきていると論じた。
その上で、計装工事業の役割としては、これまでのハードウエアを中心とした施工領域偏重から脱皮すべきことを提唱した。対象設備の制御システム計画段階から参加し、最適なソフトウエアを提供できるシステム設計技術と体制の充実強化を図る必要があると述べている。
その実現に向けて、各企業の経営、技術両面から、活性化策を模索し打ち出した。
まず、経営面では、企業毎にビジョンを持つ必要性を強く訴えると同時に、技術からマーケティングにいたるまで幅広い分野の情報交換を通した企業同士のレベル向上を求めた。技術面では、「ものの見方」や「発想の転換」につながるような情報の創造ができると、その重要性を謳い上げている。
これとは別に、縦割型組織の打破と、情報が縦横に交換できるような柔軟性のある組織への改革も指摘した。その際、人を信頼して、仕事を任せると云う習慣を定着させることの必要性も示している。
もう一方の技術面では、ハード面だけでなく、ソフトを含めたト-タルシステムとして、計装技術を身に着けることの重要性も揚げている。
ただ、ソフト部分の技術は、ハードと比較して、教育実習やマニュアルなどによって、短期間に習得するのは困難であることは云うまでもないので、人材、資金、時期については、企業はそれぞれの実情に応じた対応をするよう求めている。
4 計装工事業の将来ビジョン-2の提唱(1997年10月)
活力ある計装工事業を目指し、企業活性化への対応と課題を提示した将来ビジョン-1を出して10年を経過し、経済も社会も万事が劇的に変化し、今までの考え方では生き残れない新しい競争の時代に向けて、建設省において「建設産業政策大綱」が示され、我々の進むべき道が明らかされたことを機に、「技術と技能に優れた人材が生涯を託せる産業を目指して」を副題とした、計装工事業のビジョン-2をまとめている。
新しい競争の時代及び国際基準への対応とコストダウンを目的とした施工管理全般のシステム化等に一層努める必要があるとして、以下の4項目を計装工事業の基本的な目標としている。
① 事業の実施に当たっては高い倫理性と透明性を確保すること
② 価格競争、技術競争、国際競争に耐え得る強固な企業体力、技術力、経営力を有すること
③ コストダウンと労働条件の改善を両立させる高い労働生産性を実現すること
④ 新産業基盤の整備、環境の保全や創造、更に、国際貢献を通じて新しい役割を追求していくこと
この基本目標に対する施策として次の3つを挙げている。
(1) エンドユーザーに「ト-タルコスト」で「良いものを安く」提供する。
此処で云う「ト-タルコスト」とは、ライフサイクルコストのことである。地球規模の環境保全と深く係わるようになった今日、その技術を高める一方、計装メンテナンスに万全を期したいとしている。
また、「品質管理及び品質保証に関する一連の国際規格」であるISO9000シリーズの認証取得、地球規模での環境について、総合的な品質と安全の確保をするため、リサイクルの促進に積極的に取り組むと同時に「人-安全第一」に視点を置くとしている。
コストダウンと生産システムの改善について、国際競争力の低下を招来し、国内産業の空洞化現象による経済環境において、顧客も生き残りをかけ、コストダウンを要求してきている。工事費に占める労務費の割合の大きさや今後の若年労働者不足を背景とした労働条件の改善の必要性を考慮すれば、現場労働生産性の向上が不可欠であることを訴えている。そのための手段として、世界的に画期的な発展を見せている情報通信技術の有効利用をあげている。
(2)「技術と経営に優れた企業」が「自由に伸びられる競争環境」を作る。
建設産業政策大綱に、歴史的経緯による28業種の建設業許可業種において、技術的要素が共通しているにも拘わらず業種が細分化されていることから、技能者の多能工化を妨げているとの指摘もある。今後は、特定の分野に特化し成長しようとする企業が伸長し、大手と競えるように建設業許可や企業評価の枠組みについて、技術の体系に応じた簡素化や、時代に合わせて専門分野の評価を行える枠組みへと改善するなど規制緩和を含めた制度の見直しを行っていくことが必要であるとしている。
計装技術は、土木・建築・機械・電気等の技術と絶えず関連しあい、建設産業において、基幹的技術としての役割を担っている。
専門工事業としての的確な位置づけを訴えると共に、更に計装工事標準類を整備して、体系化された技術基盤を確立する必要があると述べている。
(3) 「技術と技能に優れた人材」が「将来を託せる産業」を作る。
建設精算活動が単品受注生産、屋外移動生産等の特性を持ち、現場ごとの異なる個別条件に即応できる人材に依存する度合いが大きいことは、施工の機械化等が進展する将来においても変わりがないと考えられる。「良いものを安く」供給し、顧客、社会の満足を高める産業とする一方、優秀な技術者の確保、技能者の労働条件の改善を進め、働く一人一人が誇りの持てる産業とすると云う両立が難しい二つの要請を達成する為には、建設産業は生産性向上に否応なく取り組まなければならない。このため、技術と管理能力に優れた技術者と現場において直接施工機能を中心的に担う基幹技能者の確保育成する対策に的を絞った明確な人材戦略が求めらているとしている。
以上の背景に鑑みて、先に紹介した「計装工事業における人材育成指針」を建設省の指導の下に策定し、広く会員企業に計装技術者・技能者に関する人材育成のガイドラインを示している。
21世紀に向かって、我が国が技術立国の地位を揺るぎ無いものとしていくためには、益々高度化・複雑化するプロセスや建築物を理解し、計装技術のエンジニアリング能力を有する優れた「計装士」の活躍が望まれるとしている。
5 日本計装工業会の活動
日本計装工業会の活動をまとめれば、次の通りである。
企業合理化に関する調査研究
- 計装工事業の事業展開、企業経営の方針を踏まえた「計装工事業における人材育成指針」に基づき、計装技術者及び技能者の位置づけ及び役割について、政策的諸活動の展開
- 労働時間短縮に関する業界啓蒙
- 企業経営及び先端技術などに関する講演会及び研修会の開催
- 関係官庁ならびに関係団体との意見交換会の実施
技術の総合的調査研究
- 若手技術者を対象とする勉強会の実施
- プロセス計装制御技術協会計装工事専門部会と共同での調査・研究
- 計装工事業界の実態調査と資料の作成
- 計装工事に関する受注動向調査の実施
技術、技能の向上及び能力の増進に寄与するための事業
- 計装士技術審査の実施
- 計装士技術維持講習会及び計装士受験者を対象とする講演会の実施
- 計装士技術審査の全国展開と定着化
- 計装工事標準要領書の作成
- 計装工事に関連する最新技術の資料収集と編集・配布
官公庁その他機関からの諮問及びこれに対する要望建議
- 官公庁その他関係機関の諮問に協力すると共に計装工事業界の地位向上に資する要望活動
計装工事業の拡大発展の促進
- 広く計装工事業に関する理解を得るための広報活動
- 全国7ブロックに展開する評議員の活動による事業の円滑化、効率化、業界の活性化を促進
業界の活性化を促進
- 機関誌「計装工事」を年4回発行
その他
- 正会員及び賛助会員の増強拡大に努める。
VI 地球環境を支える柱として、重い責務
計装は、各設備を結び、お互いを制御する機能を果たす。生産ラインでは、最も効率良く、高品質な製品が生産できるようにラインの動きが制御される。最高の効率で高品質な製品を供給し続けるよう制御するためには、その製品がどのようなプロセスで作られているかを知っていなければならない。生産工程が異なれば、当然、制御のプロセスも異なってくる。新しい制御プロセスを生み出さなければならない。そのために、各種の情報をフルに活用することで、必要な計画、設計、施工、試験と云った面での要素技術の習得も行われなければならない。
計装工事業が、新たなる飛躍を遂げるためには、企業の多大な努力が必要とされる一方で、優秀な人材を計装工事業界の中に取り込んでくることも、当然重要になる。
優秀な人材を裏付ける計装士を基礎とした、技術力の向上と施工管理体制の強化は、計装工事業を広く社会に認知させるためには、欠かせないものである。
若年労働者の3K離れや労働人口の減少が進む現在、工場では、自動化・無人化などが進められている。ビルディング建設や都市づくりも、機能中心のハイテクから、“ハイタッチ”へと、生活する者にとって、やさしく快適な環境づくりに向けて志向が変化し、そのための新しいシステムづくりが検討されている。計装は、このシステムづくりの中核技術として、果たすべき役割は大きい。
企業人はもとより一般生活者に戻った個人にとっても、毎日何らかの形で計装の恩恵にあずかっている。たとえば、快適な室内環境の中での生活ばかりでなく、工業製品一つをとっても、計装で制御された生産ラインから生み出されたものである。
産業が発展するためにも、生産技術が高度化する中にあって計装技術はなくてはならない。より暮らしやすい生活の場を作り出すためにも、人間の生活と産業を支える柱として、計装工事業、計装士の抱える責務は重い。
プロセス、ファクトリー及びビルディング施設を最適に運転管理する個別制御から、資源・エネルギーの有効利用を図り、地球環境保全を大前提にした取り組みが必須であり、そのためにも、計装技術の重要性は今後、ますます増大するといえる。
地球環境を支える計装に向けて、またその担い手である「計装士」の技術力・活躍が期待される中で、 1998年6月18日の官報にて、1級計装士が建設業法第7条第2項八による主任技術者として認められ、技術者点数として「電気」、「管」に対して各1点を与えられたことは、社会的地位の向上の一歩前進であり、励みになるところである。