4.自動制御の話

自動化と計装

B:
  
伝送の話はこの位にして、次は自動化の
話だ。
A:
  
自動化は計装の中心だから、大いに期待
するよ。
B:


















  
計装という言葉は、もともと計るということ
からきている。したがって本来センサーの
話が計装の中心になるはずだ。
しかし現実には計装というと、自動化が
中心になっていまう。これは、すべての
分野でオートメーション化がすすんでいる
ためだ。そしてはじめにも話したように、
自動化するためには、まず計ることが
必要なので、計装と自動化とは、ほとんど
同じことを意味する。
自動ということは、自動車という言葉から
も判るように、もともとは、人力を使わない
で、機械の力によって動くという意味が
あった。
しかし自動化という場合の自動は意味がち
がう。自動車の場合の自動は、現在ではむ
しろ機械化と呼ばれている。
そして、機械化されたものに対して、さらに
操作をも自動的にやるということを自動化
と呼んでいる。
自動車そのものは自動化ではない。
これにオートクラッチがつけば、その部分は自動化ということになる。
A:

  
すると、自動車は自動車ではなく、機械車
だね。そして、新幹線は自動化がすすん
でいるから、これが自動車だ。
B:

  
要するに自動化とは、手足の部分の自動
化ではなくて、頭の部分の自動化を意味し
ている。

自動化の方法に二種類

B:







  
この意味をはっきりさせるには、自動化という
よりも自動制御という言葉を使った方がよい。
ところで一口に自動制御といっても、その具体
的やり方は、大きく二つに分けられる。
一つは、電気こたつで見られるやり方だ。温度
を計り、その温度がある目標になる値と一致
するよう、自動的に操作する。
これを専門用語ではフィードバック制御と呼ん
でいる。
A:
  
どうも舌をかみそうだな。そんな難しく言わな
いでこたつ式制御と覚えておこう。
B:




  
今一つは、全自動電気洗濯機を考えればよ
い。洗濯機の中に洗濯物を入れるには、人手
でやらなければならないが、洗濯機のスイッチ
を入れると、洗濯、すすぎ、乾燥と、あとは自
動的にすべてやってくれる。これを専門用語
ではシーケンス制御と呼んでいる。
A:  これも洗濯機式制御ということにしよう。
B:
  
シーケンス制御は、要するに、一連の操作を順序に従って自動的に次々と
やってくれるということだ。

自動制御の目的

A:


  
こたつ式、洗濯機式、どちらにしても、自動的
にやってくれるなら、人手をかけないですむ。
したがって省力化ということが、自動制御の効
果だろう。
B:









  
省力化は、自動制御の大きな効果だ。機械化
によって、人間は自分で力を出して仕事をする
必要はなくなった。そして、人力よりもはるかに
大きな仕事を少ない人間でやれるようになっ
た。
しかし、機械は人間が操作してやることが必要
だった。自動化によって、今度は、その操作す
ら不要になった。
したがって、さらに少ない人手で多くの仕事が
できるようになったのだ。しかし、自動制御の
メリットは、省力化だけではない。
人間は、優れた頭脳をもっている。何かあったとき、すばらしい判断をす
ることができる。だが、逆に人間はすぐ疲れる。自動制御は、人間の頭脳
の部分を機械化することだ。しかし、人間に比べればはるかに単純な判断
しかすることができない。
ただ、単純な判断なら、疲れず休まず間違わず、忠実に仕事をしてくれる。
また人間より速く仕事することも可能だ。
だから、人間が直接操作するのに比べて、
より均一なものをより速く作るという点では、
自動制御の方がはるかに優れている。
A: 均一化と品質の向上とは関係があるのかな。
B:


  
直接は関係ない。しかし均一でなければ、
よい品質とはいえない。そして、はじめは均一
だがあまり良くない品質のものが、改良によっ
て、品質の良い均一なものになっていく。
A:
  
結局は、自動制御が品質の向上に寄与しているということだね。
B:
  
そうだ、品質の均一化と向上をささえているのは、品質管理の技術と自動制御の技術だ。

計装の対象と自動制御

A:

  
工場などにおける自動制御がどのようにして
行われているのか、もう少し具体的に説明し
てほしい。
B:




  
電気こたつや洗濯機とちがって、当然複雑な
制御が行われる。しかし、複雑であっても、
結果は、フィードバック制御とシーケンス制御
との組み合わせから成り立っている。オット、
これはこたつ式制御と洗濯機式制御といわな
ければいけなかった。
A:
  
いや、フィードバック制御、シーケンス制御と
呼んでもらっても、なんとか判りそうだ。
B:












  
ところで、この二種類の制御は、計装の対象
となる工業の種類によって、どちらが主体であ
るかがちがってくる。
まず第一のタイプは、石油化学などの装置産
業だ。これらは、シーケンス制御も多いが、主
体はフィードバック制御だ。
第二のタイプは、機械工業で、この場合は逆
にシーケンス制御が主体となっている。
この二つのタイプの中間のものもある。鉄鋼
はその代表例だ。
物を生産する工業では、制御が主体だが、
ビル管理などの場合は、制御よりも、監視が
主体となる。これを第四のタイプと呼ぶことに
する。

石油化学における制御

A:   まず石油化学について説明してほしい。
B:






  
生産の流れには、二通りある。
連続プロセスと呼ばれるものと、バッチプロセ
スと呼ばれるやり方だ。石油化学では、原料
も製品も、液体や気体など流体と呼ばれるも
のの場合が多い。原料が装置の中に連続的
に流れ込み、連続的に装置の中を流れる間
に加工され、製品も連続的に装置から流れ出
す。このような生産方式が連続プロセスだ。
A:


  
自動化された焼鳥の機械では、コンベアで鳥
をさした串が連続的に入っていって、出てきた
ときは焼鳥になっている。これが連続プロセス
だね。
B:




















  
このような場合、装置の中のそれぞれの場所
で、流量や圧力などを一定に保つ必要が多
い。焼鳥機の場合なら、焼鳥機の中の各部分
部分の温度を一定にしておいて、焼鳥の串を
流せばよい。
これは、フィードバック制御の仕事だ。石油化
学では、生産方式として連続プロセスが多
い。
したがってフィードバック制御が多いことにな
る。
焼鳥機では、温度を制御するのに、ガスの流
量を調節する。ガスの流量を調節するには、
ガス配管の中に設けられたバルブの開度を
加減すればよい。
石油化学においても、制御のための操作は、
配管中に設けられたバルブを加減する形をと
ることが圧倒的に多い。もちろんその寸法は
焼鳥機とは比べものにはならない。
自動制御に使うバルブを調節弁と呼んでい
る。石油化学工場の中はパイプラインが多い
ことが特徴だ。そのパイプラインのいたる所に
調節弁がついている。
A:
  
制御装置から調節弁までの間も、伝送が使わ
れるのだね。
B:











  
そうだ、センサーから制御装置までは、情報
を伝えるだけでよいから、文字どおり伝送だ。
これに対して、調節弁を動かすにはパワーが
必要だ。制御装置なら、調節弁を開閉する情
報だけを伝送し、実際に弁を開閉するパワー
は別に供給する方式もある。また、制御装置
から、制御兼パワーを供給するやり方もあ
る。
調節弁を開閉するパワーとしては、空気圧が
使われることが多い。空気圧の場合、情報の
伝達兼パワーの供給となることが特徴だ。
この場合、多量の空気圧配管が、計装工事
の対象となる。

機械工場における制御

A: 機械工場はどうなのだろう。
B:






  
機械工場の場合には、形のある物が加工さ
れたり組み立てられたりする。したがって機械
工場でやる仕事の内容は、次々と一連の操
作を行なうことになる。石油化学でも、一部の
工程においては、同じように、一連の操作を
加えるやる方をする。
このような装置をバッチプロセスと呼んでい
る。
A:
  
自動焼鳥機の焼鳥は、形のあるものだが、
連続だね。
B:



  
形のあるものの作業でも、焼鳥機の例のよう
に連続プロセスとみなせるものがある。
だが少ない。大部分は、マクロに見て連続
プロセスのように見えても、個々の工程では
バッチになっている。
A:   バッチプロセスは、シーケンス制御が使われるのだろう。
B:


  
そのとおりだ。だから機械工業はシーケンス制御が主体ということになる。
機械工業においては、操作についても、バルブが使われる所もあるが、
どちらかというとスイッチのオン・オフが多い。スイッチのオン・オフなら、
電気配線だ。
A:   機械でも空気圧や油圧が使われるよ。
B:




  
その場合、制御装置から、空気圧や油圧が
出力されることもあるが、制御装置からは電
気信号が出て、操作部の所で空気圧や油圧
に変換されることも多い。またバルブを使う場
合でも流量を加減するよりも、オンかオフかの
動作となることが多い。

製鉄所における制御

B:












   
製鉄所は、先程言ったように、石油化学工場
と、機械工場との中間的な立場にある。
製鉄所は、前半の工程は石油化学に近い性
質をもっている。
高炉(溶鉱炉)や転炉などはその例だ。
また後半の工程は機械工業に近い性質を
もっている。
圧延装置がその代表例だ。
ところが、よく見ると、高炉(溶鉱炉)や転炉
でも、石油化学の装置に比べると機械工業
的な面がある。
逆に圧延は石油化学工業的な性格を少し
含んでいる。
要するに中間的ということだ。

制御装置

A:

  
ところで自動制御に使われる制御装置はどん
なものかね。フィードバック制御とシーケンス
制御とでは、当然ちがうと思うが。
B:

















  
フィードバック制御用の制御装置は、制御対
象が大幅に異なっても、制御のやり方は大体
決まっている。したがって、標準化された制御
装置が利用できる場合が多い。これを調節計
と呼んでいる。
そして、センサー、伝送、調節計、伝送、調節
弁という組み合わせが一つの代表的な形だ。
  
右図のような調節計は、一つの制御ループ毎
に設備された従来型の型式である。
とくに大型生産工場の現在は、テレビ画面を
主体にした通称CRT画面上に数ループの調
節計の画像が表示されている。
いわゆるアナログ計装から、コンピュータに
よるディジタル計装に代わってきた。

    
A: シーケンス制御の場合は、どうか。
B:






  
シーケンス制御の場合は、一連の操作の自
動化だ。一連の操作の順序をシ−ケンスとよ
んでいる。
シーケンス制御の名は、ここから出ている。
ところで、このシーケンスは、制御の対象と
なる装置が異なれば、それぞれ異なってい
る。
センサーではないが、これも千差万別だ。
A:
  
そうすると、制御対象に合わせて、その都度
作るということかね。
B:




  
昔は、そのとおりだった。しかし、これは面倒
だし金もかかる。
さらに困ったことに、工程の改良や追加があ
ると、その度にシーケンスが変わるということ
だ。その度にシーケンス制御装置を作りかえ
ていたのでは大変だ。

制御装置とコンピュータ

A:
  
コンピュータで、シーケンスのソフトウエア化
すればよいと思う。
B:










  
そのとおりだ。最近では、シーケンス制御に
コンピュータが使われている。
だが、コンピュータを使うには、コンピュータ
の技術を必要とする。将来は、誰でもが、
コンピュータの技術を身につけるようになる
かも知れないが、今はとても無理だ。
そこで、コンピュータを使って、ソフトウエア
で、自由にシ−ケンスを作るという特徴を
活かしながら、コンピュータの技術は不要
という製品ができている。
これをプログラマブル・コントローラと呼んで
いる。
A: そんなうまいことができるのだろうか。
B:




  
最近は家電製品でも、マイコン内蔵のもの
がある。マイコン内臓電子レンジ、マイコン
内臓ミシンなど、いろいろある。
このマイコン内臓ミシンを動かすのに、主婦
がマイコンの勉強をしなければならないとし
たら、そんなミシンが売れるだろうか。
A:  なるほど。
B:





  
ただし、このような形にすると、コンピュータ
が真に自由自在だという特徴は失われてし
まう。したがって、従来のシーケンス制御装
置よりも、マイコンを使うことによって、
より高度の制御を行うことが目的なら、
やはり、コンピュータ技術を身につけなけれ
ばならない。
A:
  
フィードバック制御にもコンピュータは利用さ
れているのだろう。
B:






  
もちろん使われている。調節計は標準化され
ていて使い易い。しかし、よりきめ細かな、
より高度な制御を行なうためには、コンピュ
ータが必要だ。
昔は、大規模な装置でないと、コンピュータ
は使えなかった。しかしマイコンが安くなっ
たので、今では気軽に利用できる。
ただし気軽というのはお金の話だ。

制御技術

B:






  
制御をうまく行なうには、制御技術が必要
だ。これは、フィードバック制御と、シーケン
ス制御。コンピュータの利用と否とを問わ
ない。
しかも、制御装置は、単に自動制御のことを
よく知っているだけではだめで、制御の対象
をある装置の性質をよく知り抜いていること
が必要だ。
A:
  
センサーの選定にも、計装の対象をよく知
っていることが必要だったね。
B:













  
自動制御の場合は、それ以上だ。
たとえば、バブルを少しひねっても、すぐ変
化してしまうものもあれば、逆にバルブを大
きくひねっても中々変化してくれないものも
ある。
このような制御対象の性質をよく知ってい
ないと、どんな制御をすればよいかが判ら
ない。

たとえば、装置の温度を制御するのに、
装置のどの部分の温度を計れば、最も良い
制御ができるのか、また装置のどこを操作
すればよいのか、このような選定が必要だ。
またさらに、コンピュータを含めてどんな制
御装置を使うかの選定も必要だ。
A:

  
要するに、制御自体のことも、せいぎょ対象
のことも、両方共によく通じた人でないとま
ずいということだね。
B:
  
つまり文武両道に優れた人でないといけな
い。
A:  こりゃ大変だ。
B:

  
その上、石油化学も、鉄鋼も、機械もという
ことになったら、まさに超人だ。そんなことは
無理だろう。
A:

  
なにも一人ですべてをこなさなくても良いの
だろう。それぞれに明るい人が、チームワー
クで仕事をすればよいはずだ。
B:


  
そのとおりだ。それが正しい解決方法だ。
だがそのためにもピラミッド形の技術を持っ
た人が必要だ。煙突形の人が集まったの
では、よいチームは作れない。