A: やあ、こんにちは。 B: 相変わらず元気そうだね。 A:
おかげでピンピンしているよ。
ところでちょっと教えてほしいのだが、”ケイソウ”とは一体なん
のことだろう。B: やぶからぼうに。そう聞かれてもわからないな。どうしたんだ。 A:
実は昨日、電車の中で話しているのを聞いたんだ。なかなか
面白そうな話だったのだが、肝心の”ケイソウ”という言葉が
わからないので、チンプンカンプンだった。B:
なるほど、しかしただ”ケイソウ”というだけでは、ちょっと無理
だな。なにかほかにヒントはないかな?A:
うん、”ケイソウ”のほかに、”ケイソウコウジ”ということも言っ
ていた。B:
了解、それなら”計装”のことだろう。ケイは、計画の「計」で、
ソウは服装の「装」だ。
それから、”計装コージ”のコージは、建築工事や、電気工事
の「工事」のことだ。したがって”計装工事”ということだ。A:
わかった。しかし文字がわかったということで、意味はさっぱり
わからない。
B:
それでは簡単に説明しよう。まずはじめは計装について話
そう。オートメーションという言葉は知っていると思う。A:
うん。ロボットによる無人工場のことをオートメーションという
のだろう?B:
それもオートメーションの一例だ。
オートメーションは、単に工場だけ
でなく、オフィスにおける事務処理
や、研究室における実験まで、広
く、あらゆる分野ですすめられてい
る。
今まで人手に頼っていた仕事を自
動化することをオートメーションと
呼んでいる。A:
で、計装とオートメーションとはど
んな関係があるかな?B:
どうもせっかちだな。まあ落ち着いて聞け。
人間が仕事をする場合、目で見たり、耳で聞いたり、いわゆる
五感を使う。
五感によって周囲の状況を取り込んでそれを頭で判断して、
いろいろな仕事を行っている。A: 君は頭が鋭いから、第六感もよく働くようだ。 B:
第六感の話は別として、人間が機
械を使って仕事をする場合でも同
じことだ。機械の状況を五感でつ
かみ、それをもとにして機械を操
作している。A: 自動車の運転でも同じことだな。 B:
そのとうりだ。しかし機械を扱うと
なると、人間の五感では不十分な
ことが多い。そこで人間の五感の
補助として、いろいろな計器を利
用して、もっと定量的な情報を得
ることが必要になってくる。A:
自動車の場合でも、速度計や燃料の量など、いろいろ計って
いるな。B:
ところで、オートメーション化すると、自動化以前には人間が
やっていた、目や耳の部分や、頭脳の働きなども、機械にや
らせなければならない。
したがって計器の数もより多く必要となる。A: わかった!計装の計は計器の「計」だね。 B:
大変良くできました。計装という言葉は、計測装備がつまって
できたといわれている。すなわち計測器を装備することだ。
またそれに関する技術のことも計装と呼んでいる。
そして、計装は、人間が機械を操作する場合でも必要なこと
だが、オートメーション化の場合は、さらに重要である。A:
どうもありがとう。これで計装という言葉がおぼろげながら
わかった。というよりもわかった気がするといったほうが本当
かも知れない。ちょうど今日は時間もあることだし、一杯おご
るから、計装についてもう少し詳しく聞かせてくれないか。
B:
よかろう。ほかならぬ君の願いだ。
計装は、先ほど機械の操縦を例にとったが、これに限ったこと
ではない。あらゆる仕事において、その仕事のために必要な
計測器を装備することが計装だ。この意味では、日常の家庭
用品も計装されているものは多い。とくに電気製品には多い。A: 電気こたつはどうかな。 B:
電気こたつも立派に計装されている。電気こたつの中には、
サーモスタットと呼ばれる温度計がはいっている。
そしてこれによってこたつの中の温度は自動的にほぼ一定
に保たれている。すなわち電気こたつは計装されている。A:
だけど、電気こたつで計装とは言わない。電気こたつで計装と
いう言葉を使っているなら、僕だって、とっくの昔に計装という
言葉を知っているはずだ。B:
たしかに計装という言葉は使
われていない。これは、計装
という言葉が、一般に大きな
設備の場合にのみ使われて
いるからだ。そして、専門家
の用語であって日常使われ
る言葉になっていない。
言葉にも流行がある。新しい
言葉が生まれたとき、流行に
って広ろまっていく言葉と、
あまり広がらない言葉とが
ある。
また広がってもすぐすたれて
しまう言葉もあるし、永く使わ
れるものもある。A:
計装は、その広がらなかった
方に入るのだね。B:
そうだ、そして、同義語では
ないが、オートメーションの方
は普及してしまった。意味を
よく知らない人でも、
オートメーションという言葉だ
けは大体知っている。
A:
言葉の意味はその位にして、もっと計装そのものの説明を
頼む。B:
そうだね、計装はさきに話したように、計測器を装備すること
だ。しかし、オートメーションとの関連が深い。だから、計装は
単に計測だけでなく、制御機器の装備も含むものとして、とら
えられている。この意味では、計装とオートメーションとは本来
同義語ではないのだが、実際には同義語に近い感じで使わ
れている。A: なんだ、また言葉の話に逆もどりだ。 B:
そういうつもりではなかったのだが、
最近では制御にコンピュータが多く用いられている。
昔は、といってもせいぜい10年とか20年のことだが、
コンピュータはすごく便利なものだが、とにかく高価なものだっ
た。ところがマイコンの発達によって、コンピュータは誰もが手
軽に利用できるものになってしまった。A:
パソコンは、僕の息子が盛んに使っているよ。
もっともゲームばかりで役に立つことには使っていないようだ。
息子は中学生だが、小学校でもかなり使っているらしい。B:
制御だけでなく、コンピュータは計測などにもいろいろ
使われている。したがって、最近ではコンピュータの
技術も計装に含まれるようになっている。A:
つまり計装は、制御やコンピュータも含んでいるのだな。
そうなると計装もずい分広い範囲にまたがっていることに
なる。
B:
そうだ、大規模なものを対象とし、かつ広い分野を含んで
いるということになると、システムとして総合的な立場から
計装することが必要となる。
この意味では計装は、システムである。A:
そうなってくると、いよいよ電気こたつとは縁が遠くなって
くるね。B:
いや電気こたつだって立派なシステムだ。複雑・大規模で
はないが、総合的に、システムとしてとらえなければなら
ない点では変わりない。
電気こたつは、平常はサーモスタットによって自動制御され
ている。しかしサーモスタットは故障することもありうる。A:
故障して、暖まらないのは困るけども、しかし故障の結果
過熱して火事になったら、それこそ一大事だ。B:
だから電気こたつは、サーモスタットが故障しても、
少なくとも過熱しないように、2重、3重に安全装置が
ついている。
電気こたつは、極めて単純なものだが、このように、
システムとして十分な計装が施されている。
この意味では、電気こたつは立派な計装製品だ。A:
そう一人でいきまいてても、現実には計装の言葉が
普及していないことは事実だ。現に僕だって今日初めて
計装という言葉を知ったところだ。
だが、まだ漠然としてはいるが、計装は大切なことらしい
ことはわかってきた。
もう一杯ぐっとあおって、さらにメートルを上げたまえ。
B:
今いったように、本来簡単なもの
であっても、あらゆるものが計装
の対象になる。しかし現実には、
やはり複雑大規模なものが、計
装の対象と考えられる。その意
味で、計装の代表的な対象はな
んだろう。A:
製鉄とか、石油化学のような、巨
大なプラントはオートメーション
化が、ものすごくすすんでいると
聞いている。したがって、これらが計装の代表例だと思う。
B:
そうだ。これらは巨大な装置が
特徴なので、装置産業と呼ばれ
ている。装置産業は、このほか、
紙、パルプ、食品、化学、さらに
は電力やガス、水処理なども含
まれる。
大きな装置では、計器は数千、
制御装置の数も数百にもなる。
プロセス・オートメーションと呼ば
れる、独特の計装方式が確立さ
れている。
A: 機械工業はどうなのだろうか? B:
機械工業においても、計装は早
くからすすんでいた。プロセス・
オートメーションに対して、メカニ
カル・オートメーションと呼ばれて
いた。しかし、オートメーション化
が、装置産業よりは遅れてすす
みだしたが、現状はファクトリ・
オートメーションの名でよばれて
いる。A: ロボットも活躍しているんだね。 B:
ロボットもファクトリ・オートメーションの代表的なものだ。
しかしロボットだけでなく、いろいろな形をとっている。
機械工業や電気工業において、昔は、人手に頼る部分が
多かった。装置産業が、設備に頼り、人手は少なかったの
とは対照的だ、しかし機械工業や電気工業でも装置産業的
性格が強くなって、計装化もどんどんすすんでいる。
A:
OA(オフィスオートメーション)でも、計装化は著しいのだろう
かな。B:
オートメーション化という意味では、最近の進歩は、まことに
めざましい。だが、計装ということになると、ちょっとちがって
くる。
生産の分野では、オートメーションのための情報は、計器で
計ることによって得られるものがほとんどだ。
だから、計装とオートメーションとは、同義語に近くなって
いる。
しかし、事務や経営の分野では、必要な情報は、計器による
ものもあるが、大部分は人間がインプットする情報だ。A:
計器を使う計装とはあまり縁がないということだね。
計装という言葉が普及しなかったのは、計装が身近なものに
少なかったということが大きいようだ。B:
たしかにそうだ。しかし、その点ではオートメーションも同じ
ことだ。電気こたつも定義の上ではオートメーションかも知れ
ないが、電気こたつを計装という人がいないのと同様に、
オートメーションという人もいない。
だが、オートメーションの言葉は普及している。A:
日本人は横文字が好きだから、その差が現れたのかも
知れないね。
B:
計装の中にも、日常生活とのつながりの大きいものがある。
その代表的なのがビルだ。もっとも、これはビルの裏方のほ
うだから、我々の目にはふれないが。A:
ビルが計装されているとは知らなかった。一体どんな所に用
いられているのかね。B:
ビルは、電気設備、空調設備、給排水設備などがかなり
大規模な設備となっている。これも裏方の仕事だから、
我々の目にはつかない。
とにかく、それらの設備の管理の仕事は重要な仕事だ。
そしてそのための、かなりの規模の計装が施されている。
最近ではまた、防災、防犯設備も充実してきている。
そして、これらを総合した、ビルの管理が必要だ。
ビルオートメーションといわれている。
A: 次に計装工事について説明してほしい。 B:
電気こたつのように小さいものなら、別に工事などという
大げさなことはは不必要だ。しかし、太規模な機械装置や、
ビルの計装の場合には、工事が必要になってくる。
計装の目的は大きく二つに分けることができる。一つは、
オートメーション、すなわち自動化のために計装が必要で
ある。今一つは、計装の対象である装置などが、今どんな
状態にあるかを人間に知らせることにある。A: オートメーションがすすめば、人間が不要になるはずだ。 B:
たしかに、オートメーションの極限は、完全無人化だ。その
場合、人間が居ないのだから、人間に知らせることも不要
となるどろう。
しかし、現実に、そのような完全無人化は、将来は別として、
存在しない。仮に運転そのものは完全無人化したとしても
故障や事故の対策まで無人化・自動化することは難しい。
正常な運転自体も、高度な判断は人間に頼っているのが
実情だ。A:
だから、オートメーション化しても、人間のかかわりがある
わけだね。
B:
ところで、広大な場所のあちこちに計器が散在していると
したら、それを人間が見て回ることは大変だ。
多数の計測情報を1ヶ所に集めて、人間にわかり易いよう
に表示する必要がある。これを集中管理と呼んでいる。A:
テレビのおかげで、茶の間に居ながらにして、世界中のいろ
いろな情報が見聞きできることと同じだことだね。B:
テレビの場合は電波による放送だが、パイプを使って圧力を
伝えるなどの方法が多くとられている。
最近では光ファイバといって、髪の毛よりも細いガラスの糸
を使って、光で情報を伝える方法も採用されている。
いずれにしても、情報をはなれた所に送ることを伝送と呼ん
でいる。そして、この伝送のための配線や配管が、プラント
やビルなどの中を縦横に走っている。A:
ちょうど神経が人間の人体の中を縦横に走っているような
ものだね。B:
ひじょうに良いたとえだ。そして、計画された値を1ヶ所に集
めた所、それが脳に相当するわけだ。1ヶ所に集めた計器を
わかり易く並べたものを計器室と呼んでいる。また計器盤は、
独立した部屋に入っていることが多い。この部屋のことを、
計器室あるいは中央制御室などと呼んでいる。
さらに、こういった盤という概念を一新するように最近では、
テレビによる制御に変わっている。
A:
すると、計装工事は、人間にたとえるならば神経に相当する
部分、すなわち伝送の部分の工事ということだね。B:
それだけでなく、計器を据え付けたり、計器盤を作ったり据
付けたりすることも、計装工事に含まれている。A:
今の話で計装工事の内容はわかったが、どうも計装工事
は、それ固有のものはないようだね。
電気の配線は電気工事だし、配管は管工事というように、
それぞれ当てはまる工事があるじゃないか?B:
そのように考えれば、それに
ちがいない。しかし、
だからといって電気工事や管
工事などをかき集めても、良
い計装工事はできない。一応
の形はできるかも知れない
が。A: それは、一体なぜだね。 B:
また人体にたとえてみよう。電
気は、計装の場合には情報を
伝えるのに使われるが、むし
ろ一般にはエネルギーの供給
源だ。その意味では血管にた
えればよいだろう。発電が心
臓に当る。
配管は、原料や製品の運転に
使われるから、食堂や腸に対
応させることができる。人体で
いえば消化器だ。
神経とは用途の性質も異な
る。だから要求される性質も
異なってくる。
動力を伝える電気配線で、
1ボルトの電圧降下は許され
るが、1ボルトの電圧を精密に
計る場合に、電気配線によっ
て、0.001ボルトの電圧降下
が生じても問題になる。A:
なるほど、人体の呼吸器は空調設備にたとえることがで
きるね。B:
空調も計装と似た面がある。空調工事の中にも、電気
配線や配管が含まれている。
この意味では計装工事や空調工事というのは、電気工
事や管工事とは、分類のやり方がちがうことになる。A:
そうすると、電気工事と計装工事とは同列に扱えないという
ことかね。B:
分類学的にはそういうことにもなる。しかい、ここで分類学な
ど持ち出しても仕方がない。それよりも、現実にどうしたら
うまく仕事がすすむかということが大切だ。
この意味では、計装工事という形でまとめることが、電気工
事、管工事などにはばらばらにして仕事をすすめるよりも、
現実的には有利だということだ。
A:
つまり、神経は、血管や消化器とは性格がちがうから、別の
方がよいということだね。B:
そうだ。そして、計装の仕事はシステムとして、総合的に行っ
て、はじめて効果があるということだ。単なる寄せ集めではう
まくいかない。A:
システムという言葉もよく聞く言葉だが。どうもピンとこない
言葉だね。B:
人体は、どの部分をとっても、それぞれすばらしい働きをす
る。しかし、もっと大切なことは、全体として、うまく組み合わ
さって、ある働きをするということだ。
歩くという、一見なんでもないことをとってみても、人間は全く
無意識ですいすい歩いていくが、実は大変なことだ。足にあ
る多くの筋肉だけでなく、腕などの筋肉も加わって、実はうま
くバランスを保って前にすすんえいく。ロボットでも、2本足で歩
くロボットは最近やっとできるようになったが、実にギゴチない
歩き方だ。身体を横にして入り口をとおることも大変なようだ。
まして走ることなど程遠い。
これは人体がシステムとして、多くの筋肉、多くの神経、脳な
どが巧みに総合されて、歩くという目的をうまくこなしていくか
らだ。A:
システムとは、多くの要素が集まったもので、ある目的を達
成するために、総合的に働くもの、と考えて良いかな。B:
そのとおりだ。
したがって、機械装置やプラントはシステムだ。そしてまた、
計装や計装工事も、システムと考えなくてはならない。
単に電気工事や、管工事などがバラバラに存在したので
は、うまくいかない。A:
だから、計装工事はシステムとして総合された、一つの工事部門としてまとまらなくてはいけないということだね。
おかげで、計装や計装工事について、一応は理解できた。
今日は大分おそくなった。まだいろいろ聞きたいことがある
が、また次の機会に教えてもらおう。どうもありがとう。B: ではまた、さようなら。